映画を観て、想うこと。

『ユナイテッド93』を観て。

ユナイテッド93 United 93, 2006
監督ポール・グリーングラス(Paul Greengrass)

 

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“It’s “planes”. Planes. Plural. Definitely.”
飛行機(プレーンズ)と言ってる。複数だ。間違いない。」

 

2001年9月11日、アメリカの空港を飛び立った4機の旅客機が、ほぼ同時にハイジャックされた。コックピットを占領し、自ら操縦桿を握ったテロリストたちの手によって、飛行機は乗客を乗せたまま航路を大きく外れ、悲運な運命を辿ることとなる。4機の内、2機はニューヨークにあるワールドトレードセンター・ツインタワーに突入し、1機はアメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)に墜落した。しかし、ワシントンD.C.がターゲットとなるはずだった最後の1機、ユナイテッド航空93便は勇敢な乗客たちの抵抗により、テロリストの計画を阻止し、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外シャンクスヴィルに墜落した。本作は、当日の様子を描く。

 

“Get whatever we can use as a weapon.”
「武器になりそうな物なら何でもいいから集めるんだ。」

 

アメリ同時多発テロ(9.11)において、唯一テロリストの思惑を阻止したユナイテッド航空93便の様子を追った本作。鑑賞して驚いたのは、当時の様子がまるで実録ドキュメンタリーのようにリアルに描かれた作品になっている。本作のメガホンをとったポール・グリーングラスは元ジャーナリスト、彼の経験で培った取材力を活かし、関係者や遺族に丁寧に取材した結果、この映画は完成度とリアリティが極限まで高められた傑作となっている。臨場感と再現力の高さはまさに一級品である。

 

結末がどうなるかを知っているだけに、観る側が本作に期待するのは「実際に何が起こっていたのか?」ということだろう。地上では、一日に数百という便が飛び交う中で錯綜する情報に混乱し、迅速かつ適切な対応や判断がとれていない航空交通管制部や軍部様子が描かれている。一方空の上では、テロリストの目を盗み家族に電話で愛を伝える人々や、恐怖に震えながらも必死にテロリストに立ち向かおうとする乗客たちの様子が描かれている。ユナイテッド航空93便の生存者は0名、証言者がいない今となっては実際に何が起きていたかを知ることができない中で、本作は一番真実に近い状況を伝えてくれていると感じる。

 

“We are alone up here. Nobody’s gonna help us. We gotta do it.”
「我々しかいない。誰の助けも頼りにできない。我々でやるしかない。」

 

ユナイテッド航空93便には日本人大学生も搭乗していた。親元を離れ単身留学をしていた彼。異国の地で搭乗した飛行機でテロリストと乗り合わせるとは夢にも思っていなかった彼。どれほど怖い思いをしたことだろう。それでも、他の乗客たちと一緒に、彼も果敢にテロリストたちに立ち向かったことだろう。このテロ事件は日本人にとっても無関係な事件ではない。いや、全世界の人々にとって自分に/身内に降りかかる可能性があることなのだ。もし自分がその瞬間に遭遇した時、自分はユナイテッド航空93便に搭乗していた彼らのように、「やるしかない」と行動できるだろうか。立ち上がることができるだろうか。

 

“Guys, what are we waiting for? Let’s roll.”
「ぐずぐずしている場合か?やろう。」

 

19年前、ユナイテッド航空93便に搭乗していた英雄たちの物語は我々に教えてくれる。人は、絶望の境地に立たされても、勇気を振り絞り行動を起こすことができるのだと。毎年9月11日は大きな悲しみや怒りに加え、彼らの「勇気」に触れ、ほんの少しでも前を向ける一日にしたいと思う。

 

犠牲者の方々にご冥福をお祈りするとともに、大切な人を失った方々にお見舞いを申し上げます。

 

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さて、次は何観ようかな。