『タイタンズを忘れない』 2000
【原題】Remember the Titans
【監督】ボアズ・イェーキン(Boaz Yakin)

“Football is about controlling that anger, harnessin’ that aggression into a team effort to achieve perfection!”
「フットボールとは怒りに手綱を付け、如何にそれを勝利へのエネルギーに変える完璧なチームを作るかだ!」
1971年、アメリカ・ヴァージニア州の田舎町アレクサンドリアは、公民権運動の影響により人種差別の壁が徐々に取り払われ始めようとしていた。そんな中、白人の高校と黒人の高校が統合され誕生したT.C.ウィリアムズ高校のフットボールチーム「タイタンズ」は、黒人のヘッドコーチ、ハーマン・ブーン(デンゼル・ワシントン)を迎え入れる。それまでヘッドコーチを務めていた白人、ビル・ヨースト(ウィル・パットン)はアシスタントとして残るも、当然のように軋轢はチーム内に充満する。しかし、選手も指導陣も黒人と白人の混合チームは、いがみ合いを乗り越え、州大会を連勝で勝ち上がっていくのだった。
“Yeah, this is my sanctuary right here. All this hatred and turmoil swirling around us, but this, this is always right. Struggle. Survival. Victory and defeat.”
「ここが私の聖域だ。一歩出れば憎しみと混乱が渦巻く中、ここだけはまともだ。戦い、生存、勝利と敗北。」
歳の離れた友人に、好きな映画を聞いた。彼が小学生の時から知っている仲だが、大学生になった彼の口から本作のタイトルを聞いた瞬間、胸が熱くなった。彼が観てきたであろう数多の作品の中から、彼が人種差別とスポーツを題材にした本作を選んだことが無性に嬉しかった。自分もすぐに観返したが、実話をもとにした本作はやはり名優デンゼル・ワシントンの熱血/鬼コーチぶりをはじめ、名作と言われるだけのパワーも持った一作だった(若き日のライアン・ゴズリングが出ていたのには驚いた)。
“I don’t care if you don’t like each other or not, but you will respect each other. And maybe you’ll learn to play this game like men.”
「お互い好きにならなくても構わない、だが相手を認めろ。そうすればいつかきっと人として向き合えるだろう。」
数あるスポ根(スポーツ根性もの)映画の中でも、本作を観た後、一際「respect」という言葉が記憶に残った。「敬意」や「尊重」といった日本語に訳した言葉ではなく、英語の「respect」という言葉がしっくりくる。まるで違う意味の言葉のように、より強力で、より堅固で、より鉄壁な概念のように感じる。また、この概念が、一見相容れないように思える「hate(嫌い)」という概念と両立するという考えには目から鱗の気づきだった。嫌いな相手でも、「respect」することはできるのかもしれない。
“Listen to their souls, men. “I killed my brother with malice in my heart, hatred destroyed my family”. You listen, and you take the lesson from the dead. If we don’t’ come together, right now on this hollowed ground, then we too will be destroyed. Just like they were.”
「彼らの魂が叫んでる。「敵意が兄弟を殺させた、憎しみが家族を破壊した」と。耳を澄ませろ、死者から学べ。この神聖な場所でひとつになれなければ、我々も終わる。彼らのように。」
作中、タイタンズの選手たちが早朝ランニングのゴール地点である南北戦争(The Civil War)の戦地・ゲティスバーグを訪れるシーンがある。朝霧の中で膝に手をつく汗だくの選手たちの様子が、その昔同じ場所で、硝煙の中で血まみれになりながら散っていった若い兵士たちと重なる。南北戦争のあった1861年、本作の舞台である1971年、そして現代と、アメリカはいまだに同じ戦いを続けている。
人は似た者同士で群れたがる生き物である。そして、違う者同士で敵対してしまう生き物でもある。生き残るために刻み込まれた我々の生存本能が、差別を生む。完全に無くそうとするのはとても難しいし、もはや不自然なことなのかもしれない。ただ、無くそうとする姿勢の中に「respect」は生まれるように思う。これを実現するために、スポーツのできることは大きいのではないか。同じ目標を持ったチーム/チームメイトへの「respect」、対戦相手への「respect」、チームスポーツの本当の価値はここにあるように感じる。
“In Greek mythology, the Titans were greater even than the gods. They ruled their universe with absolute power. Well, that football field out there tonight, that’s our universe. Let’s rule it like Titans.”
「ギリシャ神話では、タイタンは神々より偉大だった。絶対的な力で宇宙を支配していた。今夜、あのフィールドが我々の宇宙だ。タイタンたれ。」
“Welcome to my life”、ハーマン・ブーン(デンゼル・ワシントン)がビル・ヨースト(ウィル・パットン)に言うこのセリフ。「僕の人生へようこそ」とも「僕の気持ちがわかったか」とも訳せる。お互いの「life」 に「respect」を持って関わる姿勢が解決への糸口なのかもしれない。

さて、次は何観ようかな。