映画を観て、想うこと。

『マイ・ブラザー』を観て。

マイ・ブラザー Brothers, 2009
監督ジム・シェリダン(Jim Sheridan)

 

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“I don’t know who said, only the dead have seen the end of war. I have seen the end of war. The question is, can I live again.”
(「誰が言ったか、戦争の終わりは死人しか拝めない。私は戦争の終わりを見た。問いたいのは、再び生きることはできるだろうか。」)

 

戦争で派遣されたアフガニスタンで、心に深い傷を負って帰還したサム(トビー・マグワイア)と、死んだと聞かされていたサムの生還に最初は喜ぶものの、変わってしまったサムに戸惑う家族の様子を描いた戦争映画。単純な戦争映画ではなく、物語は戦場よりも戦場から帰還したサムの日常にフォーカスされており、戦争がいかに人々の日常にまで影響をもたらすかが伝わってくる。

 

派遣される前は優しい夫、優しいパパだったサムは戦場でのある出来事によって負わされた「罪の意識」ですっかり変わり果ててしまう。目に生気がなく、不気味な雰囲気を漂わせ、他人にもその悩みを打ち明けられず、次第に疲弊していく複雑なキャラクターを演じたトビー・マグワイアの怪演は必見。罪悪感とは非常に恐ろしい心の病だと感じ、胸が苦しくなる。

 

“You’re my brother, Tommy.”
(「おまえは俺の弟だからな、トミー。」)

 

映画の終盤、サムが弟のトミー(ジェイク・ギレンホール)に電話で言うこのセリフ。改まって言うことでもない、当たり前のことを再確認するように。サムにとって、最愛の存在は弟のトミーではない。それは間違いなく妻であり、娘である。一方、最愛ではないけど、空気のように当たり前にそばにいる存在。最愛ではないけど誰より信頼できる存在。彼にとってそれが弟(brother)なのである。この何でもないセリフに、なぜか何とも言えないパワーを感じた。

 

兄弟の間には不思議な絆があるのかもしれない。人は色んな絆で他人と結ばれているが、繋がっている絆を意識しなくても信頼できる関係が、ひょっとしたらどんな絆より強いのかもしれない。

 

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さて、次は何観ようかな。