映画を観て、想うこと。

『グリーンブック』を観て。

グリーンブック Green Book, 2018
監督:ピーター・ファレリー(Peter Farrelly)

 

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“You never win with violence. You only win when you maintain your dignity.”
(「暴力では決して勝てない。尊厳を保つこと、それだけが勝利をもたらすのだ。」)

 

舞台は1962年のアメリカ。黒人ピアニストのドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と雇われ運転手(兼用心棒)のトニー(ヴィゴ・モーテンセン)は黒人差別の激しいアメリカ南部に2か月間のコンサートツアーに旅立つ。道中、数々の差別による苦難を乗り越える二人の姿、何気ない会話のやり取りでお互いを少しずつ理解し合う様子、肌の色も、性格も、家族観も全く違う二人が、旅を通して絆を深め「相棒」になっているプロセスに心を打たれる一作。ちなみに、タイトルのグリーンブックとは当時出版されていた黒人旅行者用のガイドブックのこと。

 

“Thank you for sharing your husband with me.”
(「ご主人にはお世話になりました。」)

”Thank you for helping him with the letters.”
(「こちらこそ、主人の手紙ではお世話になりました。」)

 

2か月間の旅を終えた後、二人はそれぞれの家に帰る。家族の待つアパートに帰るトニーと待つ人のいない豪邸に帰るドン・シャーリー。ほどなくしてドン・シャーリーはトニーの家を訪ね、快く招き入れられる。このやり取りはドン・シャーリーとトニーの奥さん(リンダ・カーデリーニ)の間で交わされる会話である。旅の途中、トニーが奥さんに書く無骨な手紙をドン・シャーリーのアドバイスがブラッシュアップしていた。夫一人で書いていないことに気づいていた奥さんの粋な返しだ。二人が手紙をしたためるシーンは微笑ましく、この映画が背負う「差別」というテーマに微笑ましいエッセンスを加えている。

 

私たちは、意外と他人のことを「知らない」のかもしれない。たまに会う友達、近所に住んでいる人、隣のクラスの子、職場の他の部署の人。知っているようで、実は全くその人のことを分かっていない。ましてや、相手は自分とは「違う」と決めつけてしまうと、差別意識は加速してしまう。固定観念に囚われる前に、「自分は本当に相手のことを分かっているのかな」と問いかけてみる瞬間を作るのは大事かもしれない。

 

トニーがドン・シャーリーに対する理解を深めていったように、みんな一緒に旅でもできたらいいのに。

 

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さて、次は何観ようかな。