映画を観て、想うこと。

『ソローキンの見た桜』を観て。

ソローキンの見た桜, 2019
監督:井上 雅貴

 

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“If it wasn’t for this war, we wouldn’t have met.”
(「この戦争が無ければ、私たちは出会っていなかった。」)

 

日露戦争時代の松山(愛媛県)、ロシア兵捕虜収容所で出会ったロシア兵将校のソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)と彼の手当てにあたった看護師のゆい(阿部純子)。弟を戦争で亡くしていたゆいは、はじめはロシア兵を憎んでいたが、ソローキンの優しく紳士的な人柄で次第に心を開いていき、いつしか二人の間には恋心が芽生え始める。結婚相手すら自分で決められないほど女性に自由がなかった時代に、あろうことか敵国の将校と恋に落ちたゆい、叶うはずがないその恋の行く末を現代(2018年)を生きる若いTVディレクターの桜子(阿部純子一人二役)と倉田(斉藤工)が紐解いていく。

 

「戦争の敵を受入れることは、なかなか出来ることじゃないね。」

 

日本で初めてロシア兵捕虜収容所が設けられた愛媛県松山市。戦争中にこんな出来すぎた話があったのかと疑ってしまうが、実際に松山ではロシア兵捕虜と看護師の名前が刻まれたロシア金貨が見つかっているようで、本作は「事実に着想を得た物語」とのこと。捕虜たちを丁重に扱ったのも、法治国家としての日本を世界にアピールするため、ハーグ陸戦条約を厳守し戦争捕虜に不必要な苦痛を与えないように捕虜収容所には厳しく指令が降りていたとが理由にある。日本とロシアの合作で制作された本作は、両国の視点から史実を捉えた意義深い作品である。

 

日露の関係に限らず、人類の歴史は調和だけでなく、争いも絶えないものだったが、現代がこれだけ国際化し、多くの人々が国々を行き来するようになった背景には、人々がいがみ合った過去を受入れてきた末の今日なのだ。自由に海外旅行をし、自由に愛する人を選び、海外の文化を生活に取り入れることが出来る今日を生きる我々は、そんな先人の許容の上に成り立っていることを忘れずにいたい。

 

良いことも、悪いことも、受け入れてきたうえでの今なんだなぁ。

 

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さて、次は何観ようかな。