映画を観て、想うこと。

『七つの会議』を観て。

七つの会議, 2019
監督:福沢 克雄

 

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「鬼が来る。あと5分で鬼が来る。」

 

こんな心の声から始まる本作。迫りくる鬼とは、そう、上司のことだ。営業部長の北川(香川照之)は無茶なノルマを部下に強いる、まさに鬼のような管理職。大勢の部下の前で詰められ叱責される中間管理職はグゥの音も出ず、見ているこっちの息が詰まる。「売って来い!!」、「どうすんだ!?え!?」、こんな怒号が飛び交う会議で、1人居眠りをしている社員が。そのぐうたら社員が暴き出す、昔ならではの悪しき体質が根強く残る企業が隠しているドス黒い真実とは。

 

「これ以上調べると、権利を放棄することになるぞ、知らないでいる権利を。知らない内が華だ。」

 

豪華な出演者たちの演技はすごい迫力。舞台向け(大げさなリアクション)の演技が目立つが、それがまたいい。むしろこの映画はそれでいい。顔のアップが多く、狂言師、歌舞伎役者、大御所役者からお笑い芸人(オリエンタルラジオの藤森さん)まで、幅広いキャリアの役者たちが見せる顔芸は見応え抜群。特に主人公の八角を演じた野村萬斎さんの演技は秀逸。狡猾なぐうたら社員から信念で動く正義漢まで、演じ分けが見事。佇まい、決め台詞の言い方、「イーヒッヒッヒ!」の笑い声が頭から離れない。他にも、一つの事象をキャラクタ―それぞれの視点から捉えた編集の仕方や、ミステリー要素を引き立たせる「影に演技」させる演出など、最後まで飽きさせないエンターテイメント性満載な作品になっている。

 

「この世から不正は無くならない。絶対に!」

 

会社という藩で社長/上司という君主に仕える日本のサラリーマン。組織のためなら自己犠牲を厭わない、外国の人には到底理解できないマインド。パワハラの定義って何なの?上司の言うことは絶対なの?バレなければ不正は認められるの?この映画の問いかけに対する答えは十人十色だと思う。綺麗事だけでは生きていけない世知辛いこのご時世、現代の日本社会で働く人たちにとっては特に考えさせられることが多い一作だと思う。

 

観終わった後、自分の仕事に対する心構えを振り返ることになるに違いない。「あなたにとって働くことの正義はなんですか?」と。

 

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さて、次は何観ようかな。