映画を観て、想うこと。

『キングダム 見えざる敵』を観て。

キングダム 見えざる敵 The Kingdom, 2007
監督ピーター・バーグ(Peter Berg) 

 

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"I only care that 100 people woke up a few mornings ago, had no idea it was their last. When we catch the man who murdered these people, I don't even care to ask one question. I want to kill him."
(「犠牲になった100人は人生最後の一日になるとも知らずにあの朝を迎えたんだ。テロの首謀者を捕まえたら聞きたいことなんかない。殺してやりたい。」)

 

とある日の午後、サウジアラビアの首都リヤドにある外国人居住区は惨劇の舞台となる。ソフトボール大会を狙ったテロ攻撃により大勢の命がものの数分で奪われる。FBIも捜査に乗り出すが、捜査中に起きた二次攻撃により、FBI捜査官も命を落とす。身内の命を奪ったテロ組織を相手に、復讐心に燃えるFBI捜査官フル―リー(ジェイミー・フォックス)は特別捜査チームを編成し、5日間という期限付きで現地に乗り込む。現地警察と衝突しつつも次第に信頼関係を築き、連携しながら首謀者を突き止めていく。

 

"Fleury. Tell me what you whispered to Janet, in the briefing, to get her to stop crying about Fran, you know, before all this before we even got airborne. What'd you say to her?"
(「フル―リー。ここに来る前、フランの死を知って泣きそうなジャネットに何をささやいて慰めたんだ?」)

 

一見、テロ攻撃を受けたアメリカの復讐劇を描いたように見える本作は、実はそんなに単純な話ではない。カギとなるのは、お互いの陣営で「ささやかれる」ある言葉だ。お互い、見方を慰めるために使うこの言葉は、物語の終盤で何とも言えない虚しさを観る人の心に刻む。

 

“Tell me, what did your grandfather whisper in your ear before he died?
(「おじいさんは死ぬ前に何をささやいたの?」)

 

人は攻撃されると視野を狭められてしまう。「何でこんな目にあわされなきゃいけないんだ」、「相手が憎い」、こんな感情に駆られて起こしてしまう行動が相手と同じ卑劣な行為であることも忘れてしまう。「これじゃあ、相手と同じじゃないか?」と気づく冷静さを失い、復讐を終えてから虚しさにさいなまれ、今度は怒りに燃える相手からまた新たな攻撃を受ける。やられたらやり返していては、倍返しの繰り返しでは、お互いが滅びるまで、子の代、孫の代までおぞましい負の連鎖を続けることになってしまう。

 

「見えざる敵」は、冷静さを欠いた時に見えなくなってしまう自分自身の心の醜さなのかもしれない。

 

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さて、次は何観ようかな。