映画を観て、想うこと。

『アラジン』を観て。

アラジン Aladdin, 2019
監督ガイ・リッチー(Guy Ritchie)

 

f:id:filmseemorehoffman:20190623230840j:plain

 

“Every day, I just think things will be different, but it never seems to change. Just sometimes, I feel like I’m…”
(「いつか変わるかも知れないと信じるんだけど、何も変わらないんだ。時々ふと思うんだ・・・」)

“Trapped. Like you can’t escape what you were born into.”
(「縛られているって?運命には抗えないって?」)

“Yes.”
(「そうなんだ。」)

 

砂漠の王国・アグラバーに住むアラジン(メナ・マスード)は街でコソ泥として暮らす一人ぼっちの青年。ジャスミン(ナオミ・スコット)は王宮で伝統やしきたりに窮屈感と不満を感じるお姫様。出会うはずのない二人は、ジャスミンがお忍びで街に出かけた際に偶然出会う。自分の置かれた現実を変えたいと願う二人はお互いに不思議なシンパシーを感じ、身分違いの恋をする。ジャスミンに見合う男になるために、今まで以上に自分の運命を変えたいと強く願うアラジンは、ランプの魔人/ジーニー(ウィル・スミス)の力を借りながら、持ち前の清らかな心を武器に自らの望まぬ運命を切り拓いていく。

 

“Prince Ali got you to the door, but Aladdin has to open it.”
(「アリ王子はきっかけに過ぎない、変えるのはアラジン、君自身だ。」)

 

1992年に公開されたアニメーションの『アラジン』から27年。当時の子供たちは(自分を含め)、自分が大人になる頃にはこの物語を実写映画で観れる日が来るとは想像もしていなかったに違いない。砂漠のど真ん中に築かれた王国、手グセの悪い相棒のサル、空飛ぶ絨毯、願い事を叶えてくれるランプの魔人。「こんな展開だったっけ!?」、「この曲、懐かしい。」と、当時小学生だった自分が初めてこの物語に触れたときのドキドキをそのまま再体験した。

 

“The more you gain by pretending, the less you actually gonna have. “
(「自分を偽って得れば得るほど、虚しくなるぞ。」)

 

ランプの魔人/ジーニーを演じたウィル・スミスの演技は期待を裏切らない。俳優であり、歌手(ラッパー)でもあり、コメディアンでもある彼以外にこの役は演じられなかったであろう。1992年のアニメーション作品ではロビン・ウィリアムズ(63歳没)が声優として演じたジーニー、彼の後任を務めるのは荷が重かったに違いない。引き受けただけでも立派なのに、オリジナルのキャラクターへのリスペクトと彼独自のオリジナリティも感じられる素晴らしい演技だった。

 

子供の頃に『アラジン』を観たときには気付かなかったことがある。それは、この物語に登場するキャラクターに設定された様々な人物背景である。一人ぼっちであることを恐れる青年(アラジン)、伝統に自らの運命を決められつつある王女(ジャスミン)、自由の身になりたい魔人(ジーニー)、国を乗っ取ることを企てる野心家の国務大臣(ジャファー)、娘を失うことを恐れる過保護な国王(サルタン)。この映画を観る誰もが登場人物の誰かに感情移入し、彼らの願いや葛藤に共感しながら観ることができるはずだ。子供の頃は単純な「王子様とお姫様の恋愛物語」だと思っていた物語は(←これでも何の問題もないが)、大人になった自分は少し違う感想を持った。

 

”You ain’t never had a friend like me.”
(「こんな友達はいなかったでしょ。」)

 

一方で、何年経っても変わらず感動する場面もある。数十年越しでもやはり心を打ったのは、アラジンとジーニーの友情である。幼いころからひとりで生きてきたアラジンと、1000年もの間ランプの中で一人ぼっちだったジーニー。共に長い間「ひとり」だった彼らはお互いの境遇に「共感」し、そこから強固な友情を築いている。これを証明するのがアラジンがジーニーに願う三つ目の願い事だ。たとえ自分自身のための願い事でなくても、たとえ友人が最強の魔力を持つ魔人でなくなっても、「相手の願いを叶えてあげたい」、「相手に幸せになってほしい」と思う気持ちの尊さ。現代の子供たちも、この心を「美しい」と感じてこの映画を観ていてくれた素敵だと思う。

 

この物語の基はササン朝ペルシャ時代(226年~651年)の民話を集めた説話集「千夜一夜物語アラビアンナイト)」の中の物語の一つ「アラジンと魔法のランプ」が原作となっているようだ。原作者もここまで長く、世界中に語り継がれるお話になろうとは夢にも思わなかっただろう。ましてや、魔人の真っ青な肌、マシンガントーク、度が過ぎるほどの魔法の数々を見たら・・・予想外すぎて卒倒してしまうかもしれないね。

 

f:id:filmseemorehoffman:20190623230853j:plain

 

さて、次は何観ようかな。