映画を観て、想うこと。

『ウォールフラワー』を観て。

ウォールフラワー The Perks of Being a Wallflower, 2012
監督スティーブン・チョボスキー(Stephen Chbosky)

 

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“You see things, and you understand. You are wallflower.”
(「君は周りを観察して、理解している。君は壁の花だ。」)

“I didn’t think anyone noticed me.”
(「僕なんかのことに気づいてくれている人がいるなんて。」)

 

高校に進学したばかりのチャーリー(ローガン・ラーマン)、ヒエラルキーの底辺からスタートした彼の高校生活はひょんなきっかけで知り合った2人の先輩により好転する。可憐で奔放なサム(エマ・ワトソン)と陽気で自由人なパトリック(エズラ・ミラー)、内気な彼とは真逆の二人は、親同士が再婚した義理の兄妹だった。2人との出会いによりつるむグループが出来た小説家志望の新入生は、共に笑ったり、泣いたり、恋をしたり、傷つけたり、助け合ったりしながら、過去の心の傷と向き合い、青春の1ページを彼らと認めて(したためて)いく。

 

“Why do nice people choose the wrong people to date?”
(「何で優しい人たちは間違った相手と付き合うのかな?」)

“We accept the love we think we deserve.”
(「自分に見合う相手だと思うからだろ。」)

“Can we make them know that they deserve more?”
(「本人に自分の本当の価値を伝えることはできないのかな?」)

“We can try.”
(「試せばいいじゃないか。」)

 

青春の甘酸っぱさ、ほろ苦さを思い出させてくれる一作。特に、本作に登場する高校生たちが味わう切なさや胸の高鳴りを過去に経験しことのある元高校生(大人)たちは、懐かしさとともに当時の記憶が甦るに違いない。好きな人に想いを伝える緊張、友達とケンカしたあとの気まずさ、アメフトの試合を一緒に応援する一体感、好きな曲を共有する高揚感、多感な彼らはいずれ過去の思い出になってしまう「今」を懸命に過ごしている。

 

青春は充実だけでできているとは限らない。特に主要登場人物3人(チャーリー、サム、パトリック)は、それぞれが心に傷を抱えている。注目すべきは、彼らの自由を奪い、傷つけているのが大人たちであるという点だ。いつの時代も、若者の天敵はかつて自由であったことを忘れてしまった大人なのかもしれない。一方、チャーリーのように自分を理解し、導いてくれる恩師がそばにいてくれるケースもある。本作はそういった「大人は全員敵だ」という間違った固定観念に対する救いもしっかり残している。

 

“And in this moment, I swear we are infinite.”
(「誓って言う。この瞬間こそ、僕らは無限だ。」)

 

現在進行形の青春を生きている人も、既に過ぎ去った過去だと思っている人も、「この瞬間は二度と帰ってこないから、精一杯生きましょうね」と、教えられた気がした。と同時に、テープやMDで音楽を聴かなくなった現代の若者には、ミックステープを交換する喜びや、「この曲いい!誰の曲?」の答えを探すのに時間と手間がかかる感覚を味わえないという少し悲しい事実にも気付いてしまった。便利な世の中になることで失われてしまう「青春の経験」もあるんだなぁ。

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さて、次は何観ようかな。