映画を観て、想うこと。

『翔んで埼玉』を観て。

翔んで埼玉, 2019
監督:武内 英樹

 

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「その昔、埼玉県民は東京都民から、それはそれはとてもヒドい迫害を受けており、身を潜めて生きるしかなかったのです。」

 

※この物語はフィクションです。

埼玉県民が東京都民から迫害を受けていた時代、名門・白鵬堂学院に一人の転校生がやってきた。アメリカからの帰国子女、麻美 麗(GACKT)である。転校初日からいきなり生徒会長で東京都知事の息子である壇ノ浦 百美(二階堂 ふみ)に目をつけられるも、容姿端麗、語学堪能、都会指数の高さを見せつけた麗に、逆に百美は惚れてしまう。しかし、麗の正体は埼玉県民を理不尽で不自由な生活から解放するべく組織された「埼玉解放戦線」の一員、埼玉県民だったのである。

 

「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」

 

こんなくだらないこといったい誰が考えたんだと、観終わったあと思わず拍手してしまった。内容は終始埼玉県と埼玉県民/出身者をおちょくる内容になってはいるが、作品の独特な世界観やキャラクター、ストーリー設定があまりにも突き抜けているため、もはや埼玉県民ですら怒る気も失せるに違いない。通行手形、東京テイスティング、サイタマラリア、さいたまホイホイ、まだご覧になっていない人は”何じゃそりゃ?”となるかもしれないが、本作には実にくだらなくも秀逸な発想で生まれたアイディアが詰まっている。バカバカしさ100点満点である。

 

本作の犠牲になったのは埼玉県だけではない。埼玉県の永遠のライバルとして「空前絶後のディスリ合い」を繰り広げる千葉県、そこになぜか時々群馬県茨城県も登場、とばっちりを受けるようにディスられている(シーンによっては、埼玉県よりひどい仕打ちを受けているかもしれない)。逆に、一番おいしい立ち位置だったのが神奈川県。ただ、悪口は悪口でも、貶めてやろうとする目的ではなく、純粋に面白さを追求した悪口であったから多くの人に受入れられているのかもしれない(もちろん憤慨している人がいたとしても何も不思議ではない)。

 

「あ~イヤだ!埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」

 

原作は1982年~1983年に描かれた魔夜峰央さん(まさかの新潟県生まれ)の漫画作品。40年近い月日を超えて映画化されたことになる(日本中の漫画家の皆さん、いつ何があるかわからないので、どうか希望を捨てずに頑張ってください)。そして主題歌は、「ダンダダ埼玉」のフレーズでおなじみ、はなわさん(佐賀県かと思いきや、生まれはちゃんと埼玉県春日部生まれ)の「埼玉県のうた」である。これもまたリリースから20年近く経っての再ヒットである(日本中のミュージシャンの皆さん、いつ何があるかわからないですよ)。

 

よくよく考えてみれば、映画や歌のタイトルに都道府県の名前が使われている作品はそうそう思いつかない。「良いところがない」と散々な言われようの埼玉県だが、「良いところがない」とイジられる形で作られ注目された映画や歌が存在することが、埼玉県の良いところになっていないだろうか。

 

「お前たちには埼玉を守ろうという埼玉愛はないのか?」

 

もし、自分の故郷に自慢できるところが何一つなくても、それでも故郷を愛せるのだろうか。郷土愛とは誰もが持ち得る物なのだろうか。東京で生まれ、東京で育ち、東京の大学に進学し、東京の会社に就職する人も多い中、いわゆる「帰る場所」である田舎を持っている人は羨ましい。東京都民にはどう頑張っても持てない物だから(あ、地方出身の人と結婚すればいいのか)。

 

友達や家族と、ポップコーンでも食べながらワイワイ見ることをお勧めします。最高の娯楽映画です。埼玉県民が一緒に観てくれたら、なおのこと最高です。その時は周りに千葉県民がいないか十分に注意を払ってください(笑)

 

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さて、次は何観ようかな。